サステナビリティ経営のさらなる発展に向けて
〜有識者からのコメント〜

2023年3月31日


住友商事マシネックスは、事業を通じて取り組むべき優先課題(マテリアリティ)を2022年2月に特定されましたが、その過程では各部門から選出されたメンバーが経営企画部の力強いリードのもと、半年以上の時間をかけて2030ビジョンを念頭においた議論を重ねられました。その結果、自社らしさを大切にした、社員一人ひとりが自分ごととして考えることができるマテリアリティになったと感じます。同社の強みである「現場力」を最大限に活かすべく、特定プロセスのみならずその後の社内浸透活動においても、社員をしっかりと巻き込み、一歩ずつ丁寧に、着実に取り組まれている点は素晴らしく、同社のさらなる発展に向けた力強い原動力になると高く評価します。


これまでの取組みで、各部門の活動が社会に及ぼす正負両面のインパクト分析を通じて事業と社会の結びつきが明らかになり、それが多くの社員に理解されたと感じます。こうした重要な積み重ねを土台に、今後は2030ビジョンの実現に向けた具体的な施策や目標の検討を、マテリアリティに沿って進められるものと理解しています。


サステナビリティ経営の取組みをさらに深めていくにあたっては、企業がサステナビリティに取り組む意義についてぜひあらためて考えていただきたいと思います。最も重要なことの一つは、自社が実現したい価値観や社会で果たすべき役割や責任を設定し(ムーンショット)、それを実現するためにいまなにをすべきかという逆算思考を実践することかと思います。この思考は従来のシステム思考的な、「課題を見つけ、論理的に解決する」ということの繰り返しのみでは実現できません。日本企業の多くがこの課題解決型の思考に縛られ、「ゼロイチ」を生み出せない状況を作り出しているように思われます。企業が利益を得ながら社会や環境に対して貢献していく、つまり「きれいごとで勝っていく」ためには、これまでの中期経営計画に見られるような3ヵ年のスパンのみならず、次の5年10年、さらにその先を見据えた長期的な視点と、それを支える企業の”価値ないし価値観”を明確にすることが求められているのではないでしょうか。


同社はすでに2030ビジョンの策定に全社を挙げて取り組み、自社としての「ありたい姿」を明確に定めています。こうしたプロセスは非常に重要であり、今後の同社のサステナビリティ経営の発展に間違いなく資するものと賞賛します。今後はこれまでの取組みがしっかりと根を張り満開の花を咲かせるよう、経営層のコミットメントと強いリーダーシップを期待します。また、具体的な施策や目標の検討にあたっては、近い将来のビジネスや社会環境の変化のみにとらわれるのではなく、「どのような社会を実現したいのか」という自社としての意志をしっかりと踏まえた議論をお願いしたいと考えます。


持続可能な世界の実現に向けて、社会のインフラを支える種々の事業を展開する同社が担う役割は非常に大きいと言えます。社会のあらたな課題やニーズをいち早く察知するためには、社員一人ひとりが高くアンテナを張り、顧客や取引先のみならず、地域社会なども含めた幅広いステークホルダーと対話することも有効かもしれません。また、社内の多様性に目を向け、一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出すとともに、それらを同社の競争力や新たなビジネス機会に繋げていく努力も必要となるでしょう。今回特定したマテリアリティが、同社の今後のサステナビリティ経営の発展に寄与し、あらたなるビジネスの可能性や挑戦に繋がっていくことを期待しています。


【田瀬 和夫様 プロフィール】
1992年外務省入省。国際連合に10年勤務し、国連外交、人権、アフリカ開発、官民連携、人道支援、人間の安全保障を専門とする。2014年〜2017年デロイトトーマツコンサルティング執行役員。SDGs推進室を立ち上げ、企業のSDGs戦略構築、 ESG投資対応、地方自治体のSDGs総合計画策定等を支援。2017年に独立し、SDGパートナーズ(有)を設立。